鉄道雑誌を見ていると「VVVFインバーター」という言葉がよく出てきます。VVVFというのはvariable voltage, variable frequency(バリアブル・ボルテージ・バリアブル・フリーケンシー)の略で、電圧(ボルテージ)と周波数(フリーケンシー)の両方を変えられる(バリアブル)、つまり「可変電圧可変周波数」という意味です。電圧とは電気の波の高さ、周波数というのは電気の波がどのくらい速く振動するかを表わします。
「インバーター」というのは直流電圧(ずっと一定の電圧)をオン/オフすることで交流電圧(波のように変化する電圧)を作り出す装置のことです。一つ一つのパルスの長さを長くすれば波の高いところになり、パルスを短くすれば波の低いところになります。
インバーターを使って直流から交流を作ると、周波数を自由に変えられるのがポイントです。たとえば冷蔵庫を考えてみましょう。インバーターを使わないと冷却の強さを調整することができないので、冷たくなりすぎたらオフにして、温まったら冷却をオンにする、ということを繰り返さなければならず、その間、温度は(一定の範囲で)上がったり下がったりします。インバーターで周波数を変えればモーターの回転を自在に調整できるので、インバーターを使った冷蔵庫やエアコンは、よりきめ細かな温度調整ができるのです。(家庭のコンセントにくる電気は交流ですが、それを直流に直したあと、インバーターを使って必要な周波数の交流に直しています。)
電車でも、周波数を調整することによってモーターの回転を調整し、それによって電車の速度を制御しています。(「可変電圧可変周波数」のうち、「可変周波数」はインバーターにとっては当たり前のことなのです。)
では「可変電圧」は何のためにあるのでしょうか。実は電圧を一定にして周波数で速度を調整するというのは、ある程度速度が出たあとの話で、低速では電圧を下げる必要があります。高速ではモーターの回転に抵抗しようとする逆起電力(逆電圧)が生じていたのが、低速ではそれが小さくなるので、電圧を低くしないと電流が流れすぎてしまうからです。
このように、動き出すときには周波数を上げながら同時に電圧も上げる「可変電圧可変周波数」、つまりVVVFによる制御が行われます。
VVVFインバーター方式は1980年代に開発されていましたが、VVVFインバーター方式が採用されたのは、JR東日本で本格配備されたなかでは、209系からです(量産型の209系0番代が最初に投入されたのは京浜東北・根岸線で1993年)。なお、国鉄時代の103系からステンレス製の銀色へと外観上大きく変化したのは205系ですが、209系は「重量半分・コスト半分・寿命半分」を掲げて他にも多くの新機軸を導入し、新系列車両の先駆けとなりました。
新幹線では300系(1990年試作、1993年量産開始)からVVVF制御になりました。
(この記事はパパが担当しました)
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