鉄道好きだと電車のモーター音で車両の形式を聞き分けられるようですが、モーター音はどこからくるのでしょうか。ここでは、モーターの回転そのものからくる音ではなく、多くの電車で使われていて特徴的な音のもとになっているVVVFインバーターの音がどうして発生するかについて説明します。(最近は音が静かになりましたが、基本原理は同じです。有名な「ドレミファインバーター」については後日。)
VVVFインバーターがどういうものかについては別項に書きました。VVVFインバーター制御では長いパルスと短いパルスを組み合わせてモーターを駆動する駆動信号の波形を作り出します。その駆動波形に従って回転磁界が発生し、それにつられてモーターが回転するという仕組みです。
モーターに加えられるパルスのでこぼこをならして駆動波形を見ると50Hz(ヘルツ)(1秒間に50回変化)程度ですが、長短の個々のパルスは数百~数千Hzという高速で変化します。(パルスの長さは変化するものの、参考用のキャリア波という三角波よりも所望される制御信号波が上回ったときに実際のパルスをオンにすることによってパルスを生成しているので(三角波比較方式といいます)、駆動信号の周波数はほぼキャリア波の周波数といえます。)
パルスによりモーターにかかる電圧が変化すると、磁界もそれに合わせて変動するので、モーターのコイルの鉄心などがその周波数で振動して、音が発生します(励磁音といいます)。振動はごく小さいので、モーターが壊れたりはしないのですが、この数百~数千Hzというのがちょうど人間の耳に聞こえる周波数なので、騒音となって聞こえるのです(参考までに、ピアノの中央のオクターブのラが440Hz、その上のラが880Hz)。
始動時のVVVF制御の場合、電圧を上げながら周波数も上げていくので、低音からだんだん上がっていく音になります。 ただし、周波数を上げていくとパルスが細かくなりすぎるので、ときどきパルス波の数を減らします。たとえば制御信号の波一つにつきキャリア波が9個だったのを3個にするなどです。このときいったん音が下がるので、始動時には音が上がったと思ったらまた下がって上がっていく、というのが繰り返されるのです。
インバーターによる励磁音は、技術の進歩により静かになってきています。主な方式を二つ紹介しておきます。
(1)GTOからIGBTへ
オン/オフのパルスを発生するといっても、実際に電流の切り換えを行なうスイッチング素子の速度には限界があります。かつてのGTOサイリスタの場合は500Hz(1秒間に500回の切り換え)程度が限界でした。その後IGBTという高速スイッチング素子が登場したことで、キャリア周波数を高くすることによって、耳障りなノイズを回避することもできるようになりました。
なお、今ではIGBTより進んだSiCを使ったスイッチング素子も登場しています。これは従来のSi(ケイ素)をSiC(炭化ケイ素)に変えたもので、オン/オフ切り換えの時の電力損失が少なく、省エネになるというものです。E235系などに採用されています。
(2)ランダム変調
平均的な駆動波形はそのままでキャリア波の周波数を一定範囲内でランダムに変化させることにより、励磁音の周波数を分散させ、人間が感じる騒音レベルを下げる技法もあります(ランダム変調といいます)。周波数が一定の「ピー」「プー」といった音に比べて、いろいろな周波数が混ざった「サー」という音のほうがうるさく感じにくいという、人間の聴覚の性質を利用したものです。
参考:
「交流モーター車の走行音の分析」、「VVVF名鑑」などのサイトではいろいろな車両のモーター音がまとめられています。
YouTubeでは、VVVFインバーターを自分で作って電車の音を再現する動画が見られます。
(この項目はパパが担当しました。)
VVVFインバーターがどういうものかについては別項に書きました。VVVFインバーター制御では長いパルスと短いパルスを組み合わせてモーターを駆動する駆動信号の波形を作り出します。その駆動波形に従って回転磁界が発生し、それにつられてモーターが回転するという仕組みです。
モーターに加えられるパルスのでこぼこをならして駆動波形を見ると50Hz(ヘルツ)(1秒間に50回変化)程度ですが、長短の個々のパルスは数百~数千Hzという高速で変化します。(パルスの長さは変化するものの、参考用のキャリア波という三角波よりも所望される制御信号波が上回ったときに実際のパルスをオンにすることによってパルスを生成しているので(三角波比較方式といいます)、駆動信号の周波数はほぼキャリア波の周波数といえます。)
パルスによりモーターにかかる電圧が変化すると、磁界もそれに合わせて変動するので、モーターのコイルの鉄心などがその周波数で振動して、音が発生します(励磁音といいます)。振動はごく小さいので、モーターが壊れたりはしないのですが、この数百~数千Hzというのがちょうど人間の耳に聞こえる周波数なので、騒音となって聞こえるのです(参考までに、ピアノの中央のオクターブのラが440Hz、その上のラが880Hz)。
始動時のVVVF制御の場合、電圧を上げながら周波数も上げていくので、低音からだんだん上がっていく音になります。 ただし、周波数を上げていくとパルスが細かくなりすぎるので、ときどきパルス波の数を減らします。たとえば制御信号の波一つにつきキャリア波が9個だったのを3個にするなどです。このときいったん音が下がるので、始動時には音が上がったと思ったらまた下がって上がっていく、というのが繰り返されるのです。
インバーターによる励磁音は、技術の進歩により静かになってきています。主な方式を二つ紹介しておきます。
(1)GTOからIGBTへ
オン/オフのパルスを発生するといっても、実際に電流の切り換えを行なうスイッチング素子の速度には限界があります。かつてのGTOサイリスタの場合は500Hz(1秒間に500回の切り換え)程度が限界でした。その後IGBTという高速スイッチング素子が登場したことで、キャリア周波数を高くすることによって、耳障りなノイズを回避することもできるようになりました。
なお、今ではIGBTより進んだSiCを使ったスイッチング素子も登場しています。これは従来のSi(ケイ素)をSiC(炭化ケイ素)に変えたもので、オン/オフ切り換えの時の電力損失が少なく、省エネになるというものです。E235系などに採用されています。
(2)ランダム変調
平均的な駆動波形はそのままでキャリア波の周波数を一定範囲内でランダムに変化させることにより、励磁音の周波数を分散させ、人間が感じる騒音レベルを下げる技法もあります(ランダム変調といいます)。周波数が一定の「ピー」「プー」といった音に比べて、いろいろな周波数が混ざった「サー」という音のほうがうるさく感じにくいという、人間の聴覚の性質を利用したものです。
参考:
「交流モーター車の走行音の分析」、「VVVF名鑑」などのサイトではいろいろな車両のモーター音がまとめられています。
YouTubeでは、VVVFインバーターを自分で作って電車の音を再現する動画が見られます。
(この項目はパパが担当しました。)
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